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逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

一年で一番長い日 41、42

結局、例の死体と高山父子には何らかの関係はあるだろうが、それがどういうものかは分からないし、何故俺が巻き込まれることになったのかはもっと分からない、と、分からないことを確認しただけで終わった。

それだけでも進歩だと智晴は言った。が、確かに。

想像と憶測しか出来ない状態では、どんな結論も出すことは出来ない。

夜も遅いということで、智晴はタクシーで帰って行った。リッチなヤツめ。夕飯を奢ってもらったからいいとするか。

俺は狭い風呂に入ってシャワーを使い、さっぱりしてから寝間着代わりのTシャツとハーフパンツを身につけた。

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このTシャツはビルを貸してくれている友人にもらったものだ。貢がれものらしいが、趣味に合わないという。奇抜な柄なので、俺はこれを来て外に出る勇気がなかった。というか、似合わない。

ドアを開け放したまま、全体的に三角形に近い形をしている狭い寝室に入る。エアコンは事務所の方にしか無いのでこうするしかない。いくら冷えないエアコンといえど、無いよりマシである。それでも節約のため、一時間後には切れるよう、タイマーをセットする。

疲れる一日だった。明かりを消すと、赤いチューリップとにゃんこ柄のカーテンを通して、ネオンが揺れる。もう深夜だというのに、都会の夜の喧騒が潮騒のように遠く近く聞こえた。

大通りからちょっと外れただけの場所だが、辺りは静かだ。自分とは関係のない騒音を遠くに聞きながら、俺は眠りに落ちようとしていた。離婚前から使っている枕は、どんな姿勢になってもいい具合に頭を受け止めてくれるので、入眠前のストレスを感じにくい。

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とにかく、明日は高山家の人間について調べることにしよう。本当はもう高山葵探しの依頼は断ってしまいたいが、高山・父に何らかの思惑があるらしいことを考えると、それも出来ない。

高山葵の写真。今夜会った彼そっくりの女。赤と青のマンボウのピアス。そんなものが浅い眠りの夢をシュールなコラージュのように彩っていた。

ピーナツが手を取り合って踊っている夢は勘弁してもらいたかったが、誰に頼んだら勘弁してくれるんだろう・・ヘンな形のバランスボールに揺られているようで、ベッドに寝ているにもかかわらず、俺は酔いそうになった。

夢の中で。

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今日も暑い。

俺は汗だくで目を覚ました。離婚した妻に引き取られた娘のくれたキテ○ちゃんのタオルケットがパイプベッドの下に落ちている。ごめんよ、ののか。お父さん、せっかくのキテ○ちゃんを蹴り落としちゃったよ。

隣の部屋、事務所のエアコンはとうの昔に切れている。ま、一時間で切れるようにセットしたんだから当然だ。俺はカーテンを開いて窓を開けた。

部屋中に、暴力的な夏の光が満ちる。太陽が殴り込みでもかけてきたかのようだ。

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今の時期、太陽との仁義なき闘いは日没まで続く。勝つことは出来ないが、スタミナが無いと負けてしまう。あの生命力の強いゴキブリですら陽光にさらされると死んでしまうんだから、太陽というのは凄い。

『太陽の魚は、お日様が好きだと思う?』

謎の女の謎の言葉を思い出した。その名前がついているのに、太陽が嫌いだろうか。分からない。分からないことだらけだ。朝っぱらから滅入る。イカン、人間様が太陽を見てゴキブリのように萎れてどうする。

俺は寝間着代わりの上下を脱いで、引き剥がしたシーツとともに中古の洗濯機に放り込んだ。汗臭いのを着てたらののかに嫌われてしまう。娘に嫌われたら悲しいじゃないか。だから俺はマメに洗濯をする。昔なら考えられない姿だ。

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洗濯リング、というのを使っているので、洗剤は要らない。タオル類も放り込んで洗濯機を回しながら、俺は五枚切り九十八円の食パンをトースターに入れた。薄く油を引いたフライパンにベーコンを二枚、その上に卵をひとつ。蓋をして弱火で焼くとパンと同じ頃に焼き上がる。熱々のベーコンエッグをパンにのせ、朝飯の出来上がりだ。

冷蔵庫からブリタの水を取り出そうとして、俺は昨夜智晴が入れてくれたハーブティーの鍋に気づいた。ありがたくそれをコップにつぐ。朝からなんとなくリッチな気分だ。俺ってお手軽?

智晴の言ったとおり、冷たいハーブティーも美味い。おかわりを飲みながら、俺は高山・父から渡された名刺を眺めた。俺でも知っている金融会社の名前が書いてある。高山・父はその代表取締役。いつもにこにこ笑い仮面の金貸し・・・

俺はぶるっと背中を震わせた。五年の歳月を隔てて共に行方不明となった双子。後の方はヤラセかもしれないが、何か陰惨なものを感じるのは俺だけか?

ラスコーリニコフもあんな顔をしていたのかもしれない・・・。ついそんなふうに考えてしまって、俺は高山・父の笑い仮面っぷりがよけいに不気味に思えてきてしまった。

ドストエフスキイ・言葉の生命


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